ベトナム事業背景

55万人の障害ある児童が学校に行けない

 現在ベトナムの障害ある児童の就学率は全体で40%程度とみなされる。ベトナムの障害ある児童92万人のうち、55万人は初等教育さえ受けられていないのが現状である。ベトナムにおいて特別学校は各省に1校しかなく、田舎に住む障害ある児童が町の特別学校に通うというのは不可能に近い。さらに、どこの特別学校も、受け入れには限度があり、毎年200人以上の入学を断っているという事情もある。

 インクルーシブ教育では、通常の小中学校のクラスで、障害ある児童が健常児とともに学ぶ。障害ある児童には、知的に障害ある児童、聴覚に障害ある児童、視覚に障害ある児童、身体に障害ある児童、複数の障害ある児童が含まれる。ヨーロッパでは、20~30名のクラスで1~2名の障害ある児童が学習するのが一般的である。

 インクルーシブ教育は、ベトナムの政府の方針、特別学校の数が少ない現状、世界的な障害ある児童に対する教育の潮流から、非常に妥当な事業である。当事業は、公立小学校の教師にインクルーシブ教育研修を実施し、教師が障害ある児童を受け入れ、より多くの児童が初等教育を受けられることを目的としている。


ビントゥアン省の障害ある児童の就学状況

 ビントゥアン省には、127のコミューンがあり、17のコミューンが高地に、62のコミューンが山岳地帯に、3のコミューンが島にある。また、26の少数民族がいて人口全体の6.9%になる。省内の6歳から14歳までの学齢期にある児童は、53,882人で936人が障害をもっている。この内、766人の児童が近隣の小学校に通っている。

 現在の問題は、省内の障害ある児童を受け入れている小学校の教員646人中、インクルーシブ教育研修を受けた教師は92だけで、554人の教員はなんの研修も受けていないので、教員はクラス現場で非常に混乱している事である

 現場教師の問題意識は、①障害ある児童に何度教えても上達しない。②他の児童への授業準備だけでも忙しいのに、障害ある児童のレベルに合わせた勉強の準備までできない。③障害ある児童は授業中大声を出す。④障害ある児童は授業中クラスを走り回る。⑤障害ある児童は、暴力をふるう。⑥障害ある児童の特性がわからない。⑥障害ある児童の試験や進級がわからない。

 このような問題を解決するために、教師に対して研修を実施し、教師のインクルーシブ教育のスキルを高める必要がある。また、170名の現在小学校へ行けていない障害ある児童も近隣の小学校へ行くことができるようにする。

アンザン省の障害ある児童の就学状況

 アンザン省は、カンボジアと接した位置にあり、多くのクメール人が居住している省である。主だった産業もなく、カントーのような観光地でもないので、ベトナムの貧困地域の1つとみなされている省でもある。

 6歳から14歳までの障害ある児童の人数はおよそ1,061名で、現在、障害ある児童の中で、初等教育を受けている人数は、特別学校7名、インクルーシブ小学校392名 合計399名、初等教育を受けている児童はおよそ37%のという状況である。

 現在およそ662名の障害ある児童が、特殊学校にも近隣の小学校にも通えないで、学習する機会もなくただ家にいるだけで何もせずに過ごしているという状況である。

 また、184人のインクルーシブクラスの教員のほとんどは研修をうけていない状況である。アンザン省にある聴覚障害児学校と視覚障害児学校に、教員が行って学んだだけである。アンザン省の障害ある児童の内、8割以上が知的に障害ある児童であるので、知的に障害ある児童を受け入れた現場の教師は、研修も受けていなくて、現場では非常に混乱している状況である。

 このような問題を解決するために、教師に対して研修を実施し、教師のインクルーシブ教育のスキルを高める必要がある。そして、多くの児童が近隣の小学校へ行くことができるようにする。


ラムドン省の障害ある児童の就学状況

 ラムドン省はベトナムの山間部に位置し、事業の研修実施場所であるドンナイ省に隣接する省である。

2014 - 2015
特別学校に通う児童の数:206人
近隣の小学校に通う児童の数:419人

2015 - 2016
特別学校に通う児童の数:211人
近隣の小学校に通う児童の数:490人

2016 - 2017
特別学校に通う児童の数:210人
近隣の小学校に通う児童の数:569人


 当会では、2008年ラムドン省のキーティチャー30名に対してインクルーシブ教育研修を実施した。 (日本NGO連携無償資金協力)
 2014年~2017年 ラムドン省インクルーシブ教育研修システムの構築事業を実施した。
(日本NGO連携無償資金協力)


ドンナイ省の障害ある児童の就学状況

 ドンナイ省は南東部、ホーチミン市に隣接している省である。

2013 - 2014
学齢期における障害ある児童の数:1,351人
特別学校に通う児童の数:127人
近隣の小学校に通う児童の数:1,019人
事業実施前:75%の障害ある児童が初等教育を受けている

2014 - 2015
学齢期における障害ある児童の数:2,386人
特別学校に通う児童の数:148人
近隣の小学校に通う児童の数:1,195人
事業実施1年目:50%の障害ある児童が初等教育を受けている

2015 - 2016
学齢期における障害ある児童の数:1,896人
特別学校に通う児童の数:154人
近隣の小学校に通う児童の数:1,118人
事業実施3年目:59%の障害ある児童が初等教育を受けている

2016 - 2017
学齢期における障害ある児童の数:1,776人
特別学校に通う児童の数:164人
近隣の小学校に通う児童の数:1,412人
事業実施3年目:80%の障害ある児童が初等教育を受けている


 当会では、2008年ドンナイ省のキーティチャー30名に対してインクルーシブ教育研修を実施した。 (日本NGO連携無償資金協力)
 2011年~2013年 ドンナイ省インクルーシブ教育研修システムの構築事業を実施した。
(JICA草の根技術支援協力)
 2014年~2017年 ドンナイ省インクルーシブ教育研修システムの構築事業を実施した。
(日本NGO連携無償資金協力)